車の性能を比べる数値の一つに「加速力」があり、0-100km/h・0-300km/h・0-400mのタイムを知ることで、気になる車のエンジンパワーや特性について知ることができますし、メーカーも性能の良さをアピールすることができます。
もちろん加速力が全てではありませんが、加速が良いに越したことはありません。そこで加速力に魅力がある国産車5台を取り上げ、各車の特徴をまとめました。
1. 日産 スカイライン 400R

スカイラインセダンってどんな車
2014年2月にスカイラインセダンはV37型へとフルモデルチェンジされ、当初はハイブリッドシステム搭載モデルのみ、同年5月には排気量2.0Lのターボモデルのラインアップで販売を続けていました。
その後2017年と2019年にマイナーチェンジが行われましたが、2度目のマイナーチェンジ(2019年7月)の時に大きな衝撃を与える出来事が2つ起こりました。
1つ目はスカイラインに「プロパイロット2.0」が搭載されたことです。プロパイロットとは自動車専用道路のみで使用できる「同一車線自動運転技術」の名称で、先頭車との距離を車が自動検知し速度・車間の調整を自動で行ってくれたり、車線中央付近を常に走ることができるようにドライバーをサポートする技術です。
自動運転ができるわけではなく、あくまでドライバーの負担を軽減するためのサポートシステムなので、過信しすぎは禁物です。ちなみにYouTubeなどで手放し運転や目を閉じて運転している様子がアップされていますが、カーブでも自動でハンドルが切られ車線を外れることなく曲がっている様子を見ることができ、日産の技術の高さを見ることができます。
2つ目の衝撃は「スカイライン400R」のデビューです。ここからは400Rの走行性能や魅力について掘り下げていきたいと思います。
2. 伝統ある「R」を受け継いだスカイライン400R
「400R」と聞いて一部の日産ファンは、99台限定で発売されたコンプリートカー「NISMO 400R」を思い出したかもしれません。
「NISMO 400R」はスカイラインGT-R(BCNR33)をベースとし、日産のチューニングメーカーであるNISMOが本気で作り上げたモデルです。ベースとなる2.6Lエンジン・最高出力280馬力を2.8L・400馬力にアップさせた歴史に残る名車で、その名前を引き継いだのが「スカイライン400R」なのです。
- 基本スペック
- 馬力:405PS/6400rpm
- トルク:48.4kgf・m/1600-5200rpm
- 排気量:2,997CC
- 0-100km/h 参考加速タイム:5.2秒
なんといっても注目すべき点はスカイライン史上初の400馬力オーバーのエンジンパワーです。「スカイライン400R」の元になっているエンジンは、V6 TURBOモデル(馬力:304PS/6400rpm、トルク:40.8kgf・m/1600-5200rpm、排気量:2,997CC)ですが、「400R」専用チューニングを施した結果、プラス100馬力のパワーアップを実現しており、国産車で400馬力を超える車は、レクサスLS、IS-F、GT-R、NSX程度です。
「スカイライン 400R」具体的なチューニングポイントをあげていくと、ターボの過給性能を限界領域まで使えるように、日産国内初採用のターボ回転センサーを用いたり、強化ウォーターポンプを採用した水冷インタークーラーを2基採用したりと、これまで培ってきた技術を存分に活かしたチューニングがされています。
「スカイライン 400R」の足回り性能はスカイラインの他モデルとどう違うのか?
400馬力オーバーの強烈なパワーを受け取るためには足回り性能も大変重要になってきますが、ここにも日産の技術の結晶を見ることができます。
その一つが、IDS(インテリジェントダイナミックサスペンション)です。別名「電子制御ショックアブソーバー」とも名付けられていて、クルマの挙動に対して1/100秒の素早さで4輪それぞれの減衰力を緻密に制御するシステムです。

例えば、S字コーナーでは左右の切り返し時の反応をリアルタイム化することで、ドライバーと一体になった走行が可能となり、荒れた路面や不整路面では車体の上下動を抑えてフラットな車体姿勢をキープできるように、自動で調整されます。
サスペンション制御だけでなく、「スタンダード」・「SPORT」・「SPORT+」の中から好みのドライブモードを選ぶことで、エンジン・トランスミッション・ステアリング・サスペンションを一括制御し、各走行シーンに最適のバランスが保てるようにアシストしてくれます。
スカイライン400Rのエクステリア・インテリアの特徴は?
エクステリア
ブラックのドアミラーカバーやガンメタ塗装19インチアルミホイールと245/40RF19ランフラットタイヤの組み合わせは、スカイライン400Rに堂々とした威厳を持たせてくれます。リアには「400R」のグレードバッジが付されるなど、スカイラインの他グレードとの差別化もしっかりと行われています。
ボディカラーは全9色でブラック・ホワイト・レッド・ブラウン・ブルー系など、王道のカラーや個性的なカラーが用意されています。
インテリア
本革スポーツシートやパドルシフトを搭載し、全体をブラックで統一することでプレミアム感を出しています。車内のいたるところにレッドステッチが施されており、上質な大人の空間を楽しむことができます。

3. WRX S4

WRXと聞くとスバリストは「インプレッサ」を思い出すことでしょう。その後継モデルである「WRX S4」の現在の立ち位置は「レヴォーグ」のセダン版で、インプレッサとレガシィの中間もしくはインプレッサの内装をアップグレードさせた車となっています。
そのため基本設計は4代目インプレッサと同じで「レヴォーグ」との共通部品も多々使用していますが、水平対向エンジンにターボと4WDを組み合わせる昔からの構成は変わっておらず、刺激的なスポーツセダンが無くなってきた今の時代に、必要不可欠な存在となっています。
- 基本スペック
- 馬力:300PS/5600rpm
- トルク:40.8kgf・m/2000-4800rpm
- 排気量:1998CC
- 0-100km/h参考加速タイム:5.4秒
インプレッサWRXといえば馬力規制があった当時の最高出力である280馬力を発生さえる強烈なパワーが売りでしたが、規制が解除された今は300馬力という大台にのっていて、強烈なパワーに加えて先端技術を盛り込んだ「WRX S4」は、どんなシチュエーションでも走る楽しさと興奮をドライバーに届けてくれる一台です。
ちなみに0-100km/h参考加速タイムの5.4秒は、34型フェアレディZ とほぼ同じ加速タイムで、日産のスポーツカーに十分太刀打ちできる性能を持っています。
国産スポーツカーと同レベルの加速力を持つ「WRX S4」の注目したい特徴
走行性能
スバル車の魅力の一つは水平対向エンジンで、V型エンジンに比べて低重心になるためハンドリング性能が向上することです。
それを支えるのが「WRX S4」専用設計のスポーツリニアトロニックで、変速ショックのない加速と素早いレスポンスを提供することで、エンジンパワーを効率よくトランスミッションに伝えます。
走行モードは3パターンあり、燃費や環境に配慮した「インテリジェントモード(I)」、レスポンスや加速を重視した「スポーツモード(S)」、スポーツモードをさらに突き詰めた「スポーツ・シャープモード(S♯)」があります。
この他にもビルシュタイン製ダンパーやアルミ鍛造製フロントロアアームを装備することで、ハンドリングの安定性や一段階高い次元での走行が可能になります。
総合安全技術
前方の死角をなるべく作らないようにドアミラーを大型化させたり三角窓を設けて視界設計にこだわるほか、ステアリング操作とヘッドランプを連動させて進行方向の先を照射することにより、夜間走行の安全性を高めています。
さらに運転支援システム「アイサイト」を装備することで、安全運転支援・衝突回避・運転負荷の軽減・視界の拡張が可能になり、幅広いシーンにおいて安全運転ができるようになっています。あるデータによるとアイサイト搭載車は非搭載に比べて追突事故発生率が84%も減少したという報告もあり、スバルの安全技術が優れていることを示しています。
エクステリア
2種類のスポークが組み合わされた18インチアルミホイール・LEDフロントフォグランプ・トランクリップスポイラー(オプションでリヤスポイラーを大型化することもできる)、そしてオプションでサンルーフを装備できます。
インテリア

ホールド性・疲れにくさ・快適性を追求したシート・デザインと視認性に配慮した計器類・ブラックを基調としたパネル類を装備し「WRX S4」のこだわりを実感できます。
「WRX S4」にプラスアルファを求めるならSTI Sport EyeSightがおすすめ
「WRX S4」には3つのグレードがあり、ベースとなる『2.0GT EyeSight』、走りの性能を追求しビルシュタイン製ダンパーを装着した『2.0GT-S EyeSight』、そしてSTIチューニングのビルシュタイン製ダンパーとコイルスプリング、専用ホイールやSTIロゴをエクステリア・インテリアにあしらった『STI Sport EyeSight』の3つがあります。
『STI Sport EyeSight』は「WRX S4」の最上級グレードでもあり、専用パーツも装着しているモデルですのでスバルのこだわりやチューニングを十二分に楽しむことができるでしょう。
2020年6月現在『2.0GT EyeSight』と『2.0GT-S EyeSight』の受注生産の注文受付は終了しており、在庫限りの販売となりますのでご注意ください。
4. ノート e-POWER NISMO S

2005年から日産が販売しているハッチバックですが、2012年にモデルチェン行われ2016年11月にはモーターのみで駆動するハイブリッドシステムを採用した「e-POWER」が登場、日産のチューニングメーカーであるNISMOが手を入れたノート e-POWER NISMO Sも登場しました。
2018年(2018年4月~2019年3月累計)にはトヨタのプリウスやアクアよりも多い13万1760台の登録を記録し、登録車販売台数販売で見事第1位を獲得しました。あるデータによると購入者の約7割が「e-POWER」搭載車を選択しているようで、質の高いハイブリッドシステムが評価されています。
そこでここでは最上級モデルである「ノート e-POWER NISMO S」の特徴や魅力、他のグレードとの違いを解説していきたいと思います。
- 基本スペック
- 馬力:83PS/6000rpm
- トルク:10.5kgf・m/3600-5200rpm
- 排気量:1198CC
- 0-100km/h参考加速タイム:6.7秒
- モーター最高出力:136PS/2985-8000rpm
- トルク:32.6kgf・m/0-2985rpm
エンジン単体での出力は標準的な数値ですがモーターの出力が非常に高く、エンジンとモーターを組み合わせて加速した場合のパワーは強烈です。
『e-POWER NISMO』との違いはエンジンの最高出力数(エンジン:79PS/5400rpm、モーター:109PS/3008-10000rpm)で、『e-POWER NISMO』は高回転型、「ノート e-POWER NISMO S」は中間域からのパワーが優れていることも分かります。
「ノート e-POWER NISMO S」の注目したい特徴
NISMOのDNAを感じられる走行性能
「ノート e-POWER NISMO S」には専用チューニングが施されたパワートレインや、専用ボディ補強・専用フロント強化スタビライザー・専用サスペンションなどが装備されています。

同じ車であってもエンジン特性が違うとハンドリング性能やマシンバランスが微妙に変わってくるため、搭載エンジンに合ったチューニングを施す必要があります。
そのため「ノート e-POWER NISMO S」には足回りの他にもインバーターとコンピューター(VCM)を専用チューニングし、モーターの出力増強に合わせて発電量と減速機も強化するなどの専用チューニングがなされた一台なのです。
「ノート e-POWER NISMO S」には3つのドライブモード「NORMAL」、「S」、「ECO」モードがあり、すべてのモードで減速感を強める「B」レンジを選ぶことができます。NISMOのDNAを感じたい時は「B」レンジの「S」モードに設定するのがおすすめです。
ちなみに「ノートe-Power NISIMO」では「NORMAL」でしか「B」レンジを選べないため、「ノート e-POWER NISMO S」のようなエンジンパワーを全開に活かした走行はできないようです。
5. スズキ アルトワークス(HA36型)

20年ほど前から軽自動車最速の座を争ってきた一台が「アルトワークス」です。軽自動車の限界に挑戦したともいえるアルトワークスの最大の武器は軽さとターボエンジンの組み合わせで、コンパクトカークラスには負けない加速性能を持っています。
そんな歴史を持つアルトワークスは現在でも販売されており、大型化が増えスポーツモデルが減少していく軽自動車に残された数少ない貴重な車になっています。
- 基本スペック
- 馬力:64PS/6,000rpm
- トルク:10.2kgf・m/3000rpm
- 排気量:658CC
- 0-100km/h参考加速タイム:11.3秒
歴代のアルトワークスを変わらないエンジンスペックと670kgという重量を見ると、スズキの本気度が伺えます。誰からも愛される車を作ることも大切ですが、昔からのファンやあまり多いとは言えないニーズにもしっかりと答えていくメーカーの姿は車好きからすると嬉しいですね。
今でも軽自動車最速なのか?アルトワークスの魅力
エンジンスペックは昔と同じでも、エンジン制御プログラムやタービン開発に使用されている技術は先端技術です。例えば新たなエンジン制御プログラムのおかげで、ターボラグが抑えられ加速時のレスポンスが向上したり、エネルギーロスを抑えられるようにコンプレッサーを翼形状にしたりと、馬力・トルクにロスが生じないような技術がアルトワークスには採用されています。

この他にもアルトワークスには専用開発した5速マニュアルトランスミッションとクロスされたギア比のおかげで、何速からでもスムーズで力強い加速ができる設計になっています。サスペンションもKYB製ダンパーを採用することで切れのよりハンドリングを実現しています。
アルトワークスの0-100km/h参考加速タイムの11.3秒は、ヴィッツ1.0Lの13.2秒と比べると約2秒早くコンパクトカーよりも鋭い加速を実感でき、現行型も間違いなく軽自動車最速を争えるモデルであることが分かります。
6. トヨタ「プリウス」(4代目 ZVW50)

「プリウス」といえばハイブリッドカーというイメージを持つ方がほとんどだと思いますが、「プリウス」にはパワーモードというドライブモードが備わっていて、これは燃費を犠牲にしてでもパワーを優先させるモードで、エンジン・モーター出力が向上し加速も良くなるというものです。
- 基本スペック
- 馬力:98PS/5200rpm
- トルク:14.5kgf・m/3600rpm
- 排気量:1797CC
- 0-100km/h参考加速タイム:9.4秒
- フロントモーター馬力:72PS
- トルク:16.6kgf・m/
- リアモーター馬力:7.2PS
- トルク:5.6kgf・m/
プリウスの加速力はすごいのか?
プリウスの0-100km/h参考加速タイムは9.4秒で、少し排気量が大きい2.0Lカローラの0-100km/h参考加速タイムは8.1秒です。

この数値だけを見るとプリウスの加速は特別良いわけではなく標準レベルといえますが、それでいいんです。プリウスに乗る多くの方は加速よりも燃費を気にする人であって、加速力と燃費はある意味で反対方向にあるからです。
燃費が良い=加速が遅い、加速が早い=燃費が悪いとなるので、ハイブリッド車に加速性能を求めることが間違っているともいえます。しかしプリウスに搭載されているドライブモードのノーマルとパワーモードを比べると、体感的にはパワーモードの方が加速力が上がるという口コミが多く見られます。
そのためプリウスに加速を求めるならパワーモードに設定すると、エンジンとモーターからのパワー力を体験することができます。
7. 過激な加速が魅力な国産車5選のまとめ
この記事を通して一世を風靡した各メーカーの代表車種や培われてきた技術は、今の時代にもしっかりと引き継がれていることが分かりました。
加速力が車の性能すべてではないですが、走りの楽しみを求める人にとって加速力は大切なポイントですし、加速力を比較して車を選択するのも面白いですね。
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