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マツダの秘密兵器がついに登場!新型エンジン「スカイアクティブ-X」の正体を考察する!

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突然ですが、みなさんは「マツダ」というとどんな自動車メーカーだというイメージがありますか?
「スカイアクティブ」や、「クリーンディーゼル」といった言葉が浮かんでくる方が大半だと思います。それらは正確に言うと、「SKYACTIV-G」と「SKYACTIV-D」というマツダのエンジン技術のことです。

「SKYACTIV-X」とは、それらの技術を足掛かりにし、両者のメリットを融合させたマツダ最新のエンジン技術です。
ちなみに、「SKYACTIV-G」はガソリンエンジン、「SKYACTIV-D」はディーゼルエンジンの技術です。

それらに続く第三弾の「SKYACTIV-X」がどんなエンジン技術で、従来のエンジン技術とどう異なり、何が革新的なのかを知るためには、基本的なガソリンエンジンとディーゼルエンジンの仕組みについて知る必要があります。

まずはそれらのエンジンの機構と特徴をみていきましょう。

1. ガソリンエンジンの機構と特徴について

ガソリンエンジンとは、ガソリンを燃料とし、ガソリンと空気の混合気をシリンダー内で「吸気」、「圧縮」、「燃焼・膨張」、「排気」の4工程(4サイクル)を経て動力源を生み出すエンジンの方式です(=4サイクルエンジン)。これらはシリンダーとピストンが主役である「気筒」という筒状の装置で行われます。
ちなみに、ピストンの上下運動をコンロッド(コネクティングロッド:ピストンとクランクシャフトを繋げる部品)を介してクランクシャフトに伝え、回転運動に変換させるエンジン機構を「レシプロエンジン」と言います。ですから、これから述べるエンジン形態は、正確には「4サイクルレシプロエンジン」についてです。

さて、さきほど説明した4工程ですがそのうちの「圧縮」という工程が曲者で、エンジン技術の改良・発展は、圧縮(比)の最適化との戦いと言っても過言ではありません。この圧縮工程は同じ4サイクルレシプロエンジンであるディーゼルエンジンにも共通することなので、少し複雑ですがここで説明します。

圧縮とは、ガソリンエンジンの場合、ガソリンと空気の混合気が吸気バルブが開いてシリンダー内に送入された後、下死点(シリンダー内でピストンが最も低い位置にある状態)にあったピストンが上死点(同じく最も高い位置にある状態)に達するまでに混合気の体積を小さくすることです。圧縮された混合気はシリンダー内の最上部にあるスパークプラグの火花により引火します(引火と着火の違いは次のディーゼルエンジンの項目でも説明します)。

ちなみに、車のエンジンの規模を表す言葉として「排気量」がありますが、排気量とはピストンが下死点にある時のシリンダー内の全容積から、ピストンが上死点まで上昇した時にシリンダー内上部に残る空間(燃焼室)の容積を差し引いたものです。そして、「圧縮比」とは、シリンダー全容積と燃焼室容積の比率を指します。例えば、シリンダー容積が14、燃焼室容積を1とした場合、圧縮比は14(:1)となります。この例えの場合、14よりも数字が大きくなると「高圧縮化」と言い、数字が小さくなると「低圧縮化」と言います。

さて、本題に戻りましょう。なぜ圧縮比がエンジンの肝なのかというと、この数字を適切に高めると熱効率(発生した熱がどれくらい機械的な動力に変換されるかという割合)が高まり、高出力・高トルクを発生させられる一方、高すぎると異常燃焼によるノッキング(MT車だと現象が分かりやすく、高い数字のギアに入っていて低速で走ると車が前後に揺らされるエンジン由来の振動・震えやカリカリカリという音の発生)が起こります。異常燃焼とは、スパークプラグによる火花着火以前に未燃ガスが高圧下で自着火してしまう現象です。最悪の場合、エンジンを損傷してしまうこともあります。

また、別のデメリットとして、圧縮比が14を超えると熱効率が頭打ちになる傾向が挙げられます。圧縮比を高めるということは、相対的に燃焼室の容積が減ることになるので、その容積に対するシリンダー内の表面積が増加し、壁面から燃焼で発生した熱が逃げて(熱損失)しまいます。現在では適切な圧縮比としてが8~13(:1)のエンジンが一般的です。ガソリンエンジンは熱効率とノッキングの関係上、13を超える高圧縮化は困難と言われています。

2. ディーゼルエンジンの特徴について

ディーゼルエンジンとは、軽油を燃料とし、ガソリンエンジンと同様、4工程を経て動力源を生み出すエンジンの方式です。ガソリンエンジンと機構・工程で大きく違うところは、ガソリンエンジンにはある点火プラグがないことと、ガソリンエンジンでは混合気を圧縮するのに対し、ディーゼルエンジンでは空気のみを圧縮する点です。スパークプラグの有無は、それぞれの燃料の特性(引火点と着火点の温度)が大きく異なることに理由があります。

さきのガソリンエンジンの項でも触れた引火点と着火点について詳しく説明します。引火点とは火種となるものを近づけた時に燃え出す温度で、着火点とはそれ自体が火種を必要とせずに火が付く(自然発火する)温度です。軽油の着火点はガソリンのそれと比較して100℃ほど低く、300℃~400℃です。吸気バルブからシリンダー内に送入された空気を圧縮して高められた温度でインジェクター(燃料を噴射する装置)から噴射された軽油に自動的に着火するので、スパークプラグを必要としません。
とはいえ、軽油が着火するのには最低300℃以上の温度が必要で、空気の高圧縮化が必要不可欠になります。

そのため、エンジン内部のシリンダーをはじめピストンやコンロッド(ピストンとクランクシャフトをつなぐ部品)などを太く頑丈にしなければならず、結果的に概してディーゼルエンジンはガソリンエンジンより丈夫で長寿命です。定期的なメンテナンスを行えば、乗用車でも20万キロくらいは走れます。業務用のトラックやダンプに搭載されているディーゼルエンジンは乗用車よりも強固で頑丈に作られているので、それ以上の長寿命であることは言うまでもありません。

さて、そんな高圧縮に耐えうるディーゼルエンジンの圧縮比は、かつては18~22が一般的でした。しかし、「クリーンディーゼル」の開発においてエンジン重量の軽量化や排気ガスのクリーン化向上のため、次第に比率を低下させつつあります。こちらはガソリンエンジンとは反対に、低圧縮化が困難な傾向がありましたが、マツダの「SKYACTIV-D」は、圧縮比を14にすることに成功しています。

3. スカイアクティブ-Xが革新的である理由

これまでガソリンエンジンとディーゼルエンジンの特徴と機構とを説明してきましたが、結論から言うと、「SKYACTIV-X」はガソリンを燃料とする「ガソリンエンジン」です。では、なぜ一見すると関係がなさそうなディーゼルエンジンの説明が必要だったのかというと、「SKYACTIV-X」は、簡単に言うとディーゼルエンジンと同じ燃焼形態をガソリンを使用してガソリンエンジンで行うからなのです。普通に考えれば、ディーゼルエンジンにガソリンを給油したら、壊れてしまいますよね?
それをマツダの「SKYACTIV-X」は可能にしたことが革新的だったのです。

SKYACTIV-Xで用いられている燃焼技術・方式の主役であるHCCI(予混合圧縮着火:Homogeneous-Charge Compression Ignition)は、ガソリンエンジン究極の技術と言われています。うまく制御されたHCCIであれば、燃焼室内で同時多発的に着火・燃焼が起きるため燃焼のタイムラグや燃焼ムラが起こらず、NOxやススがほとんど出ないクリーンな排気になり、最大出力や最大トルクも増し燃料消費率も向上します。
他の自動車メーカーもこのHCCIの開発に取り組んでいますが、クリアすべき課題が多く、今のところマツダ以外の自動車メーカーには開発できていません。HCCIを簡単には完成できない理由を以下に説明します。

ガソリンでHCCI燃焼を行うには、それを可能にする条件を整える必要があります。それは、燃料と空気の比率とその混ざり方、圧力、温度です。ガソリンや空気の温度が高すぎたり圧力が高すぎると、求められる自己着火のタイミングよりも早くなってしまい、結果として圧縮過程中での着火となりノッキングが起きてしまいます。
また、ガソリンや空気の温度が低すぎたり圧力が低すぎると、自己着火が不安定になり不完全燃焼を起こし、出力が落ちたり燃料消費率が悪化します。排気には不完全燃焼由来のHC(炭化水素)が多く含まれることになります。無害にして排出するには、触媒を介して水と二酸化炭素にする必要があります。理想的な燃焼を常に行ない続けることがいかに難しいことなのか理解していただけたと思います。

以上の理由で実現困難と言われているHCCIですが、マツダの「SKYACTIV-X」エンジンに搭載されているエンジン技術は部分的にHCCIを採用した火花点火制御圧縮着火:SPCCI(Spark Controlled Compression Ignition)というものです。具体的に説明すると、ガソリンと空気の混合気をシリンダーに送り込んだ後、それを圧縮することで自然発火(自己着火)させるのを常に行うのがHCCIですが、マツダのSPCCIは走行状況に応じて部分的にHCCIを稼働させ、それ以外の時には火炎球による点火をおこなうというシステムです。

SKYACTIV-X」エンジンの仕組み出典:マツダ株式会社

エンジンの低負荷時(ほぼ一定のエンジン回転数を保持して走行する高速クルージング走行など)にはHCCIで走行し、高負荷時(坂路走行や急加速時)にはスパークプラグでの火炎伝播燃焼を行って走行します。2つの燃焼形式を同時に成立させるためには、走行状況の的確な感知と分析が必要ですが、それらの制御システムを構築した結果、圧縮着火燃焼の成立範囲を拡大させつつ、火花点火燃焼のスムースな切り替えが実現しました。

マツダのSPCCIを上回る完全なHCCIを完成させるということは、燃焼室内で混合気全体が同時多発的に完全燃焼できるような高圧縮化の完成とほぼ同義で、空気や燃料の温度・組成が異なる状況下であっても、常時稼働させるためには非常に精巧で緻密な各種数値の解析とそれを可能にする部品や装置が必要になります。それでも、どの自動車メーカーも実現しえなかったHCCIを部分的にとはいえ実現させることができたことは、「夢への第一歩」を踏み出したといえるでしょう。

4. スカイアクティブ-Xが達成できたこと

マツダのSPCCIを採用したSKYACTIV-Xは、従来のガソリンエンジンよりも高出力(kWやpsなどで表される車の最大パワー)で、トルク(回転軸を中心にはたらく、ねじる力)も強く、燃料消費率も20%~30%改善され、低燃費が売りの同社のSKYACTIV-Dに肉薄するレベルです。環境性能的にはPM(パティキュレートマター:極微小なすす)やNOx(窒素酸化物)の発生を最小限に抑えています。ディーゼルエンジンのような低燃費と、ガソリンエンジンのようなクリーンな排気を両立したことにこの技術の開発意義があります。

マツダの基本的な考え方は、まだしばらくは従来通りエンジンを動力源とする車が使われ続けるというもので、それを基軸に考えどれだけ燃料から車の動力源としてのエネルギーを取り出せるかに重点を置いています。そして、それは取りも直さず環境性能を追求することでもあります。燃料が車を動かすことにエネルギーを使うということは、その分だけ排熱や排気ガスなどの排出物を抑えるということにもなるからです。

例えば、1リッターあたり10キロしか走れなかったのが、20キロ走れるようになったとすると、1リッターから取り出せる走行可能距離が2倍になったということになります。燃料が持つ本来のエネルギーをどのように燃焼させれば効率よく取り出せ車の動力源として使えるのか、それを追求してできたのがマツダの「SKYACTIV-X」なのです。

5. SKYACTIV-Xの革新性だけでは終わらない
マツダのあくなき挑戦は続く

2010年から始まったマツダ・スカイアクティブテクノロジーシリーズの最新エンジン技術である「SKYACTIV-X」。
マツダは同社のガソリンエンジン技術「SKYACTIV-G」とディーゼルエンジン技術「SKYACTIV-D」を融合させ、夢のエンジン「HCCI」の完全達成を実現すべく新時代に向けた革新的な技術である「SPCCI」を開発しました。
ドライブすることの楽しさと環境性能を同時に達成すること、それがマツダの目指している究極の目標であり内燃機関のポテンシャルを最大限引き出す技術は、ハイブリッド車や電気自動車、水素自動車に勝るとも劣らない未来の車の革新性を秘めています。

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